地震の夢で母が逃げる不安と愛の絆を描く短編小説
夜明け前の薄暗い部屋で、夢の中で私は自分が地震の直面前に立っていることに気づいた。身の回りは揺れ動き、壁が崩れそうな音が聞こえてくる。恐怖と緊張が込み上げ、心臓が激しく鼓動する。
「どうしてここにいるんだ」と自問自答しながら、私は目を覚ます。汗をかいた顔に手を当て、深呼吸をする。夢の中で感じた恐怖は現実のなかにまだ残っている。しかし、すぐに冷たい朝の空気に身を任せ、目を閉じる。
数時間後、別の夢に引き込まれる。この夢もまた、地震の直前の様子だった。しかし、この回は母が私を守るために逃げ出している姿が描かれていた。
母は夢の中でいつものように優しく微笑みながら、私の腕に手を置いて「大丈夫か」と尋ねた。「地震が来るから、お前も一緒に逃げておくれ」と告げた。
「でも、お母さんも一緒に逃げないと」と私が尋ねると、母は一瞬ため息をつき、「私も逃げるけど、お前のことを一番考えてるから」と答えた。
私はその言葉に胸が詰まった。母の愛は何よりも強い。しかし、地震の前には逃げるしかなかったのだ。母と私は一緒に逃げることのできない運命を背負っている。
夢の中で私たちは無数の道を辿り、人混みの中を突き進んだ。壁が崩れそうな音、足の下が揺れ動く感覚、それらが現実の恐怖をリアルに感じさせていた。母はいつも私の手を握りしめ、私を守るために前を進んでいた。
「お母さん、大丈夫」と私が声をかけると、母は顔を振り返り、「大丈夫。お前がいるから」と微笑んだ。
しかし、夢の中の私たちには終わりがない。逃げ続けるうちに、私たちは無理やり立ち止められた。母が私の前に立ち、再び話し始めた。
「お前もここにいることが危険だから、私が一歩先に進んでおく」と母は言った。「お前が安全に到着するまで、私が待っている。」
私の心は切なくなる。母の愛は深いが、私たちの運命は分かっている。母が一歩先に進む姿が見えたその瞬間、夢が切れる。
目を覚ますと、部屋は静かだった。母の姿は夢の中だけのものだった。しかし、その夢が私に教えてくれたことがある。母の愛はどこにでもある。どんな恐怖や困難の中でも、母は私を守るために戦っているのだ。
地震の夢は不安と恐怖の象徴だが、母の愛はその恐怖を超える強さを持っている。私たちの絆は地震の影響を越えて、永遠に続いていくのだ。