紅樓夢の奇丑風流才子贾宝玉の隠れた顔
「紅樓夢」は清代の曹雪芹が著した中国古典文学の傑作で、豊かな人間模様と深遠な思想性で知られています。その中で、宝玉という主人公が描かれる一方で、周囲の人々の性格や運命も細部に至るまで描かれています。その中、宝玉の従兄妹で、一時的に宝玉と同住する王熙鳳が特に注目に値します。熙鳳は外見上は「丑女」として知られ、しかし内心は賢明で利口、宝玉との関係も深い人物です。
熙鳳の外見は「丑女」と呼ばれるにふさわしく、顔に大きなほくろがあり、耳も小さく、鼻も高いなど、一般的な美女の条件を満たしていないと言えます。しかし、曹雪芹は熙鳳の外見を単なる「丑女」として描写するのではなく、彼女の内面の美しさを強調しています。
まず、熙鳳は非常に賢明で利口です。彼女の頭脳は宝玉や賈政などの男性たちにも劣らず、家の内政を取り仕切る力を持っています。宝玉が病気になった際には、彼女が看病をし、家の経済を支えるなど、宝玉の代わりに家を守る存在となっています。また、熙鳳は宝玉の心の内をよく理解しており、彼の感情を優しく支えています。
さらに、熙鳳は宝玉と非常に深い関係を築いています。彼女は宝玉の愛情を寄せる美玉(林黛玉)に対して強い敵意を持ち、美玉の死後に宝玉を慰める役割を果たしています。宝玉が美玉のことを思い出すたびに、熙鳳は彼を慰め、彼の心を癒しています。
熙鳳の外見の丑さは、実は彼女の内面の美しさを象徴しているとも考えられます。宝玉が熙鳳の外見を批判する場面がありますが、宝玉自身もまた、熙鳳の内面の美しさを認識しています。宝玉は熙鳳を「丑女」と呼ぶ一方で、彼女の内面の美しさを称賛しています。
「紅樓夢」の中で丑女として描かれる熙鳳は、外見の丑さを超えた内面の美しさを持ち、宝玉の人生において重要な役割を果たしています。曹雪芹はこのように、人間の外見と内面の対比を通じて、深遠な思想を伝えています。
熙鳳の丑さは、彼女の内面の美しさを強調する手段であり、また宝玉と彼女の関係を深める要素でもあります。宝玉が熙鳳の外見を批判する場面も、彼の内面の葛藤や苦悩を描くためのものであると言えます。
「紅樓夢」は、単なる物語ではなく、人間の内面と外見の関係、感情と理性の対立、美と醜の対比などを深く掘り下げた作品です。その中で、熙鳳という丑女の存在は、その深さと複雑さを感じさせ、読者に深い印象を残します。