酒の夢路一夜の飲み会後の幻覚の夜

夜は明け方の零時を回り、喧騒が続く街のようすは遠く、静かな住宅街の暗闇が広がっていた。僕は一人、酒の夢路を歩いていた。先日の同僚の結婚式で一杯干した結果、今夜は一晩中寝られないという予感が重かったが、どうしようもなく家路を急いだのだ。

部屋に入ると、冷たいベッドが僕を待っていた。体が重く、目も覚めないようにと息を切らせながら、ベッドに横たわった。しかし、意識はすぐに消えず、酒の影響か、それとも心の重荷から逃れるための幻覚が生まれたのか、夢の中へと引き込まれた。

夢の中は、まるで別世界のような場所だった。広々とした森の中を歩いていた。星が輝く夜空の下、木々が静かに揺れ、風が通る音が耳に心地よく響いていた。しかし、その美しい景色の裏には、何か不安なものが漂っていた。

その先に現れたのは、一匹の大きな犬だった。その目は赤く、まるで火のように輝いていた。犬は僕に向かって歩いて来たが、僕は恐怖を感じて、後退しようとする。しかし、犬は僕の足取りを追い、一歩も引かない。

「君、逃げるな。君にはもう逃げる場所がない」と犬が声をかけた。その言葉に、僕は一瞬、現実と夢の区別がつかなくなり、恐怖と絶望に包まれた。

その時、突然、犬の目が消え、彼の姿も次第に薄れ、彼の言葉も耳に届かなくなった。僕は深呼吸をし、少しでも心を落ち着けようとしたが、その先に現れたのは、またもや別の幻覚だった。

夢の中で、僕は街の中心部に立っていた。高層ビルが並ぶ繁華街で、夜の街の光が目も眩むほど輝いていた。しかし、その中には僕にとって忘れられないものが隠されていた。

一つの小さな店の前に立っていると、店の扉が突然開き、そこから僕の幼い頃の友人が現れた。彼らは笑顔で僕に招き入れた。しかし、その笑顔には、何か隠されたものが感じられた。

「君、戻ってきて。ここで君の過去を取り戻してやろう」と友人が言った。しかし、僕は彼らの言葉に疑問を感じ、その場を離れようとした。

その時、友人の一人が僕に向かって一歩踏み寄り、その手を握った。その手が僕の手に触れた瞬間、夢の中の全てが崩れ去り、現実の部屋に戻された。

ベッドに目を覚ますと、部屋は暗闇に包まれていた。深呼吸をしながら、僕は意識を取り戻した。酒の影響で覚醒したのか、それとも夢の中で心の深部に触れたのか、僕は一瞬、その違いがわからなかった。

しかし、その後も何度か夢の中に引き込まれた。それぞれの夢は、僕の心の中に眠る恐怖や不安を表現していた。夜の酒と夢は、僕の心を深く刺し、一晩中、夢の中で旅を続けたのである。